《MUMEI》 . わたしは金井さんに顔を近づけて、ねぇ…と呼びかけた。 「松本先輩ね、今、小説にハマってるんだって!」 囁くように言ってから、わたしは彼女から顔を離して、首を傾げた。 「この前、デート中に教えてくれたんだけどォ…ジャンルが…」 なんだっけ?と、首を傾げる。金井さんはハッとしてわたしの顔を見つめていた。 わたしは彼女の視線に気づかないフリをして、腕を組み、考え込む。 「えっと、確か、恋愛…違う。SF?…違うな。歴史だ……いや、ノンフィクションだったか…?」 適当なことをブツブツ呟き始めると、金井さんはあからさまに、ウズウズし始めた。なにかを必死にガマンしているように。 そんな彼女をよそに、 わたしは、あっ!と声をあげた。 「思い出した!!ファンタジー小説だ!」 わたしの台詞に、 金井さんの肩が、一度、大きく揺れた。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |