《MUMEI》
暴かれた正体
.

わたしは彼女の姿を横目で見ながら、

無邪気に笑った。


「帰りに本屋で買ってプレゼントしてあげよう!新刊欲しい、って言ってたし!」


楽しげに、そう言い終えたわたしに、

金井さんが物凄い勢いで顔をあげ、


今までにないくらいの大声で、喚いた。



「ミステリー小説だっつーのッ!!」



叫びながら、カッと力強く目を見開いた彼女は、

明らかに普段とは別人だった。

金井さんは、激しい勢いのまま、つづける。


「松本先輩が好きなのは、ミステリー!!しかも、アメリカ人女性作家の『検視官シリーズ』がお気に入りなのッ!!でも、残念でしたっ!!最新刊は、すでにプレゼント済みなのよっ!!この、わ・た・し・がッ!!」


普段のドモリがウソのように、非常に滑舌よく、彼女はまくし立てた。


そこまで言ってしまってから、

金井さんは我に返り、

一瞬で青ざめた。


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