《MUMEI》 . 「まあ、『大人の事情』ってヤツだよ」 空を見上げながら、のんびりした口調で、川崎先生が言った。 中庭のベンチに、わたしと先生は腰をかけていた。 わたしが、大人の事情ですか…と繰り返すと、先生は深々と頷いた。 「君はまだ、覗かない方がいい世界だよ」 …………そういう言い方されると、 なんとなく、カネの臭いがする気がすんのは、 わたしだけでしょうか? あーやだやだ!とわたしが肩をすくめると、川崎先生がわたしを半眼で睨み、こっちの台詞だ、とぼやいた。 「関わるなって、あれだけ釘を刺したのに、わかってなかったんだなァ…」 意外とバカなんだね、と暴言を吐く。わたしはあぁん!?と凄んで、先生を睨みつけた。 先生はあっさり無視して、またため息をつく。 「義仲さんも、義仲さんだし。あのあと、俺、あやうく殺されかけたんだよ。君にヘンなこと、吹き込むなってさ」 命がいくつあっても足りないよ、とまたぼやいた。 . 前へ |次へ |
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