《MUMEI》
すげー
「あの、羽の生えた変な生き物。可愛かったな、て」

「……変わった人ですね」

少し間を置いて、凜が答えた。
変わった人とは、凜にだけは言われたくない気がする。

「テラ、よかったね。可愛いってさ」

そう言って、凜は何もない地面に微笑みかける。
その様子を不思議そうに見ていると、凜は再び羽田の肩に手を乗せた。

「わっ!」

突然、目の前にあの変な可愛い生き物の顔が現れた。
羽田の反応に、その生き物はキャッキャッと喜んでいる。
おそらく、この生き物の名前がテラなのだろう。
その向こうでは、さっきの少年が不思議そうに羽田を見ていた。

「なあ、凜。なんなんだよ、そいつ?」

まだ声変わりもしていないような高い声で少年が言う。
よく見ると、彼はこの学校の制服を着ている。
外見から判断するに、どうやら一年か二年のようだが、羽田には見覚えがない。

「わたしの担任、羽田先生。彼、この学校の一年、宮村レッカ。サボりの常習」

レッカとはまた、妙な名前だと思いながら、羽田は少年を見つめた。
レッカは上から下まで羽田を眺めると、視線を凜へと戻した。

「おまえの先生ってことは?」

「こっちの世界の人」

「うわ、マジで!?」

レッカは突然大声を出して目を丸くした。
高い声がさらに高くなった。

「すげー、俺、凜以外でそっちの人間見るの初めてだ。すげー」

すげー、を連発しながら、レッカは羽田を眺め回す。
そのレッカの動きに合わすかのように、テラも走り出した。

「……津山さん」

「はい?」

「何がなんだか、さっぱりなんだけど?」

「……そうですね。知りたいですか?」

羽田は大きく頷いた。

「……どうしよう」

凜が悩むような仕草を見せた時、遠くから何だかわからない、不気味な声が響いてきた。

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