《MUMEI》

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傍にいた千影がうろたえながら、大丈夫?と声をかけてきた。

わたしは顔に張り付いたその雑巾を剥がしとると、椅子から立ち上がって、周囲を睨みつけた。


「わたしの美しい顔に、こんな汚れたモン投げ付けたのは、どこのどいつだ!?」


物凄い剣幕でいきり立つと、


少し離れたところから、


「あ、俺だ!」


まったく悪びれる様子のない、呑気な声が聞こえて、

わたしはそちらを、ギロリと睨みつける。


そこには、わたしの顔を見て、血の気がひいたクラスの男子数人と、


掃除用の箒をバットに見立てて構えている義仲がいた。


彼は物凄い形相のわたしにニッコリして、爽やかに言う。


「ナイスキャッチ、璃子!」


それから、何事もなかったかのように、ねーねー!ほかに雑巾ない?と、青ざめた仲間たちに声をかけはじめた。


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