《MUMEI》
他愛ないこと
.


…………。



わたしは剥がしとった雑巾を、そこら辺にポイと捨てて、千影に向き直る。


「…で、いろいろあってさー」


何事もなかったかのように話のつづきをするわたしに、千影は意外そうな顔をした。


「怒らないの?」


そう尋ねた彼女に、わたしは美しくほほ笑んで、余裕をみせつけた。


「怒る?どうして?」


「だって、さっき雑巾…」


「あれは遊んでただけでしょ?」


「でも顔に…」


「あんな他愛もないことでイチイチ怒っていたら、体力もたないわよ」


ほほほ!と高笑いするわたしに、千影は、あっそう…と、呆れたように頷いた。



…………そうなのだ。


こんなことで、腹を立てていたら、


あんなヤツとは、付き合っていけない。



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