《MUMEI》 「あははっ。良く言われるよ。和月と私は二卵性だし」 しかし、一宮に気にした様子はなく、彼女はブツブツと何か言っていた。 「こら、そこ喋らない。」 すると、小笠原に注意されてしまった。 「じゃあ、これ。一宮さん、解いてみてくれる?黒板に書きに来て」 この小学校は私立やら国立やらの中学に進学する人も多々いるくらいの進学校で、今日転校してきた一宮に、今やっている所を授業も聞かずに、解けるとは俺には思えなかった。 小笠原が出した問題は、自慢ではないが、学年でトップの俺でも分からないような問題だった。 しかし。 この一宮陽和は、俺の予想を完璧に裏切ってくれた。 「はい。」 凛と通る綺麗な声で、しっかり返事をすると、スタスタと長い腰まである艶やかな黒髪をなびかせながら、黒板の前まで行った。 「はい、チョーク」 手渡された、まだ長いチョークを手に取って、黒板に書かれた問題を見る。 「どう?出来るかしら。」 挑むように、小笠原は一宮を見る。 一宮はジッと黒板を見つめたまま動かない。 「あの、これって小学校でやる問題ですか?」 困ったように小笠原に尋ねる一宮を見て俺は、ヤッパリ分からないんだ、と彼女を舐めていた。 前へ |次へ |
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