《MUMEI》
4.
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徹はスーツの内ポケットから金色のカードを取り出しホテルのフロントに見せた。

フロント「いつも、ありがとうございます。少々、お待ち下さいませ。………お待たせ致しました。お部屋の方1507になります。今ご案内いたします。」

徹「今日は荷物がないから案内はいいよ。朝食を食べたいんだけど、部屋に運んで貰えるかな?」

フロント「かしこまりました。すぐに、ご用意させていただきます。」

徹はカードキーを受け取るとエレベーターホールへと真理と一緒に歩いて行った。

その様子を 丈 は凝視していた。
そして、ゆっくりと立ち上がると同じくエレベーターホールへと向かった。


普通のホテルは午後2時や3時頃からのチェックインが多いがグランドピアノホテルは特別階だけチェックインは何時でも良い待遇になっている。
他にも色々なオプションがあるため大変人気があって平日の朝でも利用客が多い。
ロビーは豪華で広く、その奥にはモーニングビュッフェが美味しいと評判のラウンジがある。
ラウンジは朝から活気があって賑やかだ。
ロビーにはモーニングの空席待ちのお客が大勢待っている。
最後のお客がモーニングを食べる頃にはランチになってしまいそうだ。
その更に奥にエレベーターホールがある。
ロビーからエレベーターホールの間に大人気のラウンジがあるので人混みを抜けて行かなくてはいけない。
エレベーターホールに辿り着いた時には真理達が乗ったと思われるエレベーターは既に上に向かっていた。
エレベーターは全部で6機あるのだが、1機だけが上に向かっていて2つは1階で客を乗せていて、他の3機は下に向かっていた。
グランドピアノホテルは15階建てで2階はレストランが幾つか入っている。こちらはランチになると混雑する。
3階は結婚式や催し物が出来る会場になっている。
4階はシアタールームとフィットネスクラブがあり5階はエステと花屋と美容院がある。6階から13階までがホテルになっていて14階はディナー専用の高級レストランとバーがある。
最上階の15階はVIP会員のみ利用出来るホテルになっている。
真理達が乗ったエレベーターは途中で一度も止まる事なく最上階の15階で止まった。
あの真っ赤なスポーツカーからして真理と一緒に居た男は、かなりの金持ちなのだろう。

俺はショックで震えていた。
まだ真理が浮気しているとは限らない、などと自分を宥めてエレベーターに乗った。
俺の他に数名の客が乗って来て3階や4階のボタンを押した。
俺は震える指で15階のボタンを押した。
エレベーターに乗っていた客達が全員、俺の方を怪しげな目で見た。
俺は、そんな視線を構っている余裕などなかった。
真理が浮気だなんて…考えないようにしても考えてしまう…頭の中がパニックで身体が、どうかなってしまいそうだった。
エレベーターが3階、4階と止まり客達は降りて行くが、誰もが俺の方をチラチラと見ていった。
誰が、どう見ても俺は怪しい人物にしか見えないのだ。
俺が15階に行った所で、どうにもならない事は分かっている。しかし居ても立ってもいられないのだ。
エレベーターは15階に止まりドアが開いた。
廊下に一歩出た俺は呆気に取られてすぐに立ち止まった。
先っきの3階や4階で扉が開いた時の景色とは全く比べ物にならない。
本当に同じホテルなのか?
まるで異国に来てしまったようだ。
真っ赤な絨毯に天井には見た事もないような美しいシャンデリア。廊下だけでここまでするのか、というくらいお金をかけた作りだ。
ここで、この豪華さだ部屋の中は、どれだけ凄いのか…想像すら出来ない。
すぐさま俺はエレベーターのボタンを押した。
ここは俺のような凡人が立ち入れる所ではない。
物凄く危険な場所に入ってしまったかのように思えた。色んな恐ろしさで体がガタガタと震えだした。
こんな時に限ってエレベーターは、なかなか来ない。
気持ちだけ焦る。
その時、どこかのドアが開く音がした。
ヤバイ!
と思った所へエレベーターが来た。



つづく

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