《MUMEI》
穏やかな空気、続かず
バレンタインの翌日、俺はいつも通り高山本家に来ていた。


「来てたのか」

「こんにちは。お邪魔してます」

「あぁ、もう『こんにちは』な時間か。こんにちは、ご苦労様」


その日は珍しく、秀さんがいて


どうやら店が休みらしく、俺と会った時は寝起きで、ボーッとしているようだった。


ちなみに、騒がしい頼と厳は二年生だから、普通に学校に行っていた。


「そういえば、母さんは?」

「支店の抜き打ちチェック」


大志さんが言うように、今日は果穂さんは朝からその為に出かけていた。


何故朝からかというと


果穂さんは、普通に行くと目立つから


先に龍平さんのショップに行き、変装してからチェックに出かけるからだった。


「父さんは、今日は一緒に行かなかったんだ」

「税理士が来る日だから。田中君と会わせておきたかったし」

「あぁ、そうか」


(この二人だけだと、この家、本当に穏やかだよな)


そんな、穏やかな空気は


バタン!


ダダダダ!


「祐也久しぶり!受かった!付き合って!」


俺に抱きつく柊により、凍りついた。


「あ゛ぁ゛!?何寝言言ってんだぁ、クソガキ」


(…え?)

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