《MUMEI》

1秒……。


2秒……。


3秒……。


あれ?


全く何か起こる気配がない。


俺は恐る恐る目を開いた。


目の前の牛はただ俺をジッと見ていた。


そして俺に問う。


「今から主様を呼ぶ。

だがもし貴様が主様と無縁だったのなら………。

その時は分かっておろうな?」


「は、はい。」


確実に殺されますよね?


俺の返事を聞くや否や、
牛は前足を大きく掲げて一気に地面へ降り下ろした。


さらに大きく嘶(イナナ)く。


耳に手をあてがい、
俺は必死に気を保とうとした。


何しろ地響きが半端無くでかい。


立っているのもやっとだ。


そうこうしている内に、
突然、天井のある一部だけに穴が空いた。


唐突に差し込む光に目が眩む。


「お前、こんな所にいたのか。」


懐かしい声。


その声を聞いた時、
俺は堪らない安心感に包まれ、
腰を抜かしていた。

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