《MUMEI》
いつもの事
秀さんの変化に俺は戸惑っていたが


ピンポーン


「あ、税理士来た」


大志さんはあくまでマイペースだった。


「あああぁ、秀さん、こんにちは」

「ちょっと面貸せ。説明しろ

内容次第では………」

「や、やだな、誤解ですよ!」

「とにかく来い」

「わかりました」


柊は、小動物のようにプルプルと震えながら、秀さんの後をついていった。


「田中君、紹介するよ。税理士の田中さん。同じ名字だから覚えやすいだろ?」


「あ、はい」


(本当に、大志さんは変わらないな)


俺が、田中さんと自己紹介をし合っている時も


田中さんと、景気や税金の話をしている時も


秀さんの部屋から説教らしき声と


柊の情けない声や、悲鳴が聞こえても


大志さんは、常に穏やかでマイペースだった。


「…相変わらずですね」


そう言った、税理士の田中さんは、今年五十になるベテランの男性で


高山家と、長年付き合いがあるようだった。


「子供の中では志穂が、孫の中では希が一番だからね」


大志さんは、笑顔できっぱりと言った。

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