《MUMEI》
希先輩と行けない理由
「ね? 祐也。緊張するから、一緒に行って?」


(俺といる方がヘタレがバレて困るんじゃないか?)


甘えた口調の柊を見ながら俺はそう思った。


(それにしても、美形は得だな)


小首を傾げる男など、普通気持ち悪いだけだが、柊を見ても


呆れはするが、吐き気はしなかった。


「…希先輩と一緒に行けばいいんじゃないか?」


男の俺でも嫌悪感が無いのだから


女で、しかも彼女の希先輩なら、柊の頼みをきいて、一緒にどこでも行きそうな気がした。


「希には、あんなドロドロした世界見せられないよ」

「ドロドロって…」


(俺はいいのか?)


俺は、無意識に柊を睨んだらしく、柊は慌てて弁解を始めた。


「いや、あの、その、つまり…事務所に問い合わせた時聞いたんだけど
今、灰原(はいばら)さんが担当してるのは、離婚裁判でね…そういうのは、特に希には見せたくないなぁって…」

「お前も将来やるかもしれないのに?」

「お、俺はまだ、どういう分野の弁護士になりたいかは、まだ決めてなくて…

まぁ、依頼を選ぶような弁護士にはなりたくないから、やるかもしれないけど、仕事を家庭には持ち込まないし… …」

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