《MUMEI》

驚いて身体を離そうともがくといっそう強く捕らえられる。


「ちょっ…何…考えっ……」

「リュウの事。」

舌をからめられてうまく話せないオレと対象的に平然と阿騎は答え、なお唇を重ねる。


「っつ、はな…して…くれ…!」


やっと身体を離した拍子にオレは崩れ落ちた。

「平気?」

そう行って人の顔を覗いて意地悪く笑う顔はいつもの阿騎と同じだった。


「平気や!何もあらへん!!」

安心したんだか悲しいんだかわからずとりあえず逃げるようにその場を去る。

―何かこんなんばっかりや!
もう油断はすまいと心に決めた瞬間だった。

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