《MUMEI》

「──スバル‥」


「どうされました?」


丁度、花瓶の水換えとったとこらしい。


「珍しいですね──お嬢様からお越しになるなんて。もしや──」


「ちゃうてばっ‥これ返しに来ただけや」


「それでしたらお構いなく」


「ぇ?」


「差し上げますよ、特別に」


「は‥?」


あたしもろても困るんやけど‥。


「アンタのやろ? 何であたしが持たなあかんねん」


「滅多に手に入る物じゃありませんよ?」


出た‥コイツの得意技‥。


「くれぐれも大切に扱って下さいね」


「ちょっ‥まだ受け取るやなんて‥」


言うてへんのに‥。

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