《MUMEI》

.

彼は、そんなわたしを見て、フッと笑う。すぐ目の前までやって来ると、立ち止まって、わたしの顔を覗き込んだ。

そして、もしかして、と呟く。


「美濃に、イジメられた?」


彼の問い掛けに、小田桐さんはすかさず、違うわよ、と、仏頂面で言い返した。

それから肩を竦めて、ビックリするようなことを言った。


「彼女、ソウのことが、気になって気になって、しかたないんですって。ソウと関わって傷ついても、構わないって。仲良くしてあげたら?」


突然、小田桐さんは、ペラペラとしゃべりだした。あんなに反対していたのに…。

わたしは慌てて、彼女の言葉を遮った。


「違うんですッ!いや…違くないんですけど…その、わたし、えっと…」


モゴモゴと口ごもりながら、わたしは耳まで赤くなっていくのを感じた。恥ずかしくて、顔を、あげることが出来ない。

心臓が早鐘を打つ。ソウさんに、聞こえてしまうのではないかというくらい、強く、烈しく。


ソウさんは、そっか…と曖昧に頷きながら、

急に、わたしの両手を取った。優しく包み込むような、手つきだった。



ビックリして、顔をあげると、



目の前に、ソウさんのキレイな目が、あった。

視線が絡んだだけで、胸が、締め付けられるように、痛んだ。



.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫