《MUMEI》 . 彼は、そんなわたしを見て、フッと笑う。すぐ目の前までやって来ると、立ち止まって、わたしの顔を覗き込んだ。 そして、もしかして、と呟く。 「美濃に、イジメられた?」 彼の問い掛けに、小田桐さんはすかさず、違うわよ、と、仏頂面で言い返した。 それから肩を竦めて、ビックリするようなことを言った。 「彼女、ソウのことが、気になって気になって、しかたないんですって。ソウと関わって傷ついても、構わないって。仲良くしてあげたら?」 突然、小田桐さんは、ペラペラとしゃべりだした。あんなに反対していたのに…。 わたしは慌てて、彼女の言葉を遮った。 「違うんですッ!いや…違くないんですけど…その、わたし、えっと…」 モゴモゴと口ごもりながら、わたしは耳まで赤くなっていくのを感じた。恥ずかしくて、顔を、あげることが出来ない。 心臓が早鐘を打つ。ソウさんに、聞こえてしまうのではないかというくらい、強く、烈しく。 ソウさんは、そっか…と曖昧に頷きながら、 急に、わたしの両手を取った。優しく包み込むような、手つきだった。 ビックリして、顔をあげると、 目の前に、ソウさんのキレイな目が、あった。 視線が絡んだだけで、胸が、締め付けられるように、痛んだ。 . 前へ |次へ |
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