《MUMEI》
ソフトタッチ
阿部は何を血迷ったか、仁美のおなかを円を描くようにソフトタッチ。
「何やってるの阿部さん?」
「仁美さん」
阿部の目が夢の中だ。ヘタしたら犯されてしまう。仁美は本気で慌てた。
「目を醒まして。助けてくれたんじゃないの?」
「仁美」
「呼び捨てにするなバカ!」口を尖らせて睨む。
「仁美!」
阿部は右手で仁美のおへその周辺をソフトタッチしながら、左手はショーツに伸びた。
「待って!」
仁美は阿部の手から逃れようと腰を動かしたが、阿部は三本の指で的確に急所を押さえた。
「あっ…」
仁美は焦る。
「阿部さん、やめて。今すぐやめてくれたら忘れるから。でもそれ以上触ったら痴漢で訴えるよ」
しかし阿部は攻めをやめない。
「許したって、どうせあの薄情なダンナのもとに返すだけじゃないか」
「そんなことない。ほどいてくれたら触ってもいいから」
「その手には乗らないよ」
阿部は2箇所攻めで仁美を困らせる。触れるか触れないかの微妙なタッチが、仁美を慌てさせた。
「もう十分でしょ、やめて」
セクシーに腰をくねらせる仁美。そのしぐさが男を興奮させることは、最近モテ始めたばかりの仁美は知らない。
「仁美さん。おなか弱点でしょう?」
「別に」
仁美は唇を結んだ。阿部の勝ち誇ったような笑顔が怖い。なぜ弱点を見抜いたのだろうか。
「正直に認めたら許してあげる」
「いいからやめて」
「そうやってとぼけるなら本気で攻めちゃうよ」
「あん」
まずい。仁美はもがいた。
「わかった、やめて」
「何がわかったの。認めるってこと?」
悔しいけど認めないと攻め続けられてしまう。仁美は睨むような顔で頷いた。
「うん」
「嘘、ホントに弱いんだ?」阿部の目が光り輝く。
「え?」
攻めをやめない。仁美は怒った。
「何やってるの、話が違う!」
「話なんか違わないよ」
「あ、ちょっと待って…」
仁美はまだ世の中をわかっていない。Sに弱点を教えたら最後、とことん攻められるに決まっている。
「あん、やめて、やめて」
阿部は両手でおへその周辺を触りまくると、仁美の脚のほうに回った。
「何をする気?」
阿部が屈む。まさか。そのまさかだった。両手は巧みに円を描いたまま、仁美のいちばん大切なところへキスの嵐。
「キャア!」
下着の上からとはいえ、いくら何でもやり過ぎだ。仁美は怒鳴った。
「こら、やめなさい、許さないよ!」
だが阿部は聞く耳を持たない。
「阿部さん。阿部さん?」
舌技もおなかへのソフトタッチも巧み。夜這いプレイの店で磨いた阿部のテクニックは、一般主婦の仁美にも通じた。
「あ、ちょっと待って、ちょっと待って…」
快感が一気に増した。仁美はのけぞり、歯を食いしばる。人妻なのだ。夫以外の男の舌技で不覚を取るわけには絶対に行かない。
屈服してしまったら夫に顔向けができない。しかし耐える自信はなかった。何とか許してもらうしかない。
「阿部さん、一旦やめて、お願いだから」
全くやめる気配はない。
(ああん、Sだと思ってたけど、こんなにドSとは思わなかった!)
仁美、再びの大ピンチだ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫