《MUMEI》
行くか、行かないか
「で、祐也、一緒に行ってくれるんだよね」


大志さんと秀さんに絡まれながらも、柊は必死になって話題を戻し、俺を見た。


(しかし、何で決めつけてるんだ?)


その答えは、すぐに出た。


「その日は登校日でも、うちに来る日でも無いからね」


大志さんは、俺よりも俺のスケジュールを把握していたのだ。


「だからさ、行こうよ」

「興味無いんだけど」

「いてくれるだけでいいから! あ、そうだ、これあげるから!」


そう言って、柊が取り出したのは


毎年恒例になりつつある、俺への


手作りの友チョコだった。


「今年も頑張ったから!ホワイトデーお返しいらないから、一緒に行って、お願い!」

「…考えとく」


俺は結局その日は即答せず、自分のアパートへ帰った。


そして、柊からもらった友チョコを、確認した。


(確かに凝ってるな)


それは、抹茶のチョコで


ハート型を四枚合わせ


四葉のクローバーの形をしていた。


(しかも、本物も入ってるし)


四葉のクローバーのしおりは、明らかに手作りと思われる物で


(ここまでされたら、行くしかないな)


そう、思ってしまった。

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