《MUMEI》
夢みたい
.


…………そ、そんなぁ。


せっかく、ようやく、会えたのに。



巴に引きずられながらも、わたしはどうしても名残惜しくて、最後にソウさんの方を振り返った。

彼は依然としてニコニコしていて、なにを考えているのかわからなかったけれど、

わたしと目が合ったとき、

ゆっくり、口を動かしたのが、見えた。



−−−また、あとで。



彼の唇は、確かにそう動いていた。

また、あとで。



……………ってことは、


また会えるの!?


会ってくれるの!?



わたしはパッと顔を明るくして、巴に気づかれないよう、ソウさんにほほ笑んだ。

彼はわたしの顔を見て、小さく手を振る。

それを確認してから、わたしは彼から目を逸らし、まえを行く巴の後ろ姿を見つめた。


再び、ソウさんに会えることを、


心待ちにしながら−−−−。





◆◆◆◆◆◆





教室に戻ってからも、わたしは自分の席で頬杖をついて、ぼーっとしていた。



最後に見た、

わたしにほほ笑みかける、ソウさんの姿。


そして、


『また、あとで』


という、あの言葉…………。



.

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