《MUMEI》 事件「あと、もう一回……勝負」 それでも負けず嫌いな俺は、闘志復活。 「いいけど?」 やっぱり帝の笑みには、余裕が含まれていた。 トントンっ─── ドアがノックされて、返事をすると、母さんが部屋に入ってきた。 「剣。今、お母義さんから電話があってね。私、ちょっと盾と一緒に行ってくるわね」 時計はもう十時半を指している。 「え……ばぁちゃんが?わかった。行ってらっしゃい」 ばぁちゃんは、家の近所に住んでいて、もう今年で九十歳になる。 さすがに足腰も痛むらしく、よく、母さんを呼び出していた。 「なんだかね、体調悪いみたいで。心配だから。多分今夜は遅くなるから先に寝てて。じゃあ、留守番よろしく。お父さんは今日残業で帰れないんですって。」 そう言うと、母さんは部屋を出ていった。 「おばぁさん、大丈夫なのか?」 話を聞いていた帝が、心配そうに俺に聞いてくる。 「あぁ。大丈夫だろう。ばぁちゃん、なんだかんだ言ってもスゲー元気だし」 暫くすると、玄関が閉まる音がして、次に車の出ていく音がした。 その頃には俺たちもゲームを再開していた。 「………っ!くそっ……何でそこ言うこと聞かねぇんだよ!」 前へ |次へ |
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