《MUMEI》
豪華な送迎
裁判所に行く日。


(何か、変な感じだな…)


俺は、柊と大志さんに言われ、初めてスーツを着た。


『できるだけ目立たないように』


そう、柊に言われ、柊と同じデザインのごく普通の黒のリクルートスーツを買った。


(そろそろ行くか)


スーツに合わせて買った、黒い革靴を履いて、俺は部屋を出た。


ちなみに


ごく普通に見えるこの靴は、実は『シューズクラブ』で


特別に、店員ではなく壱子ちゃんに選んでもらった物だったりする。


(遺伝って、すごいよな)


俊彦さん譲りの才能を見せ付けた壱子ちゃんを思い出しながら、俺は駐車場に向かった。


「おはよう、祐也」

「おはよう、志貴」


龍平さんがいつも乗っている、黒いセダンタイプの車の左側


運転席に、志貴はいた。


「祐也は助手席ね」

「あ、うん」


言われた通り、俺は助手席に乗った。


「免許取ったら最初に祐也を乗せるって決めてたの。本当は、自分の車が良かったけど、それはまだ無いから」


志貴は笑顔でそう言った。


(意外だ…)


志貴は、普通に安全運転だった。

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