《MUMEI》 柊のトラウマ「… …本当に、志貴の運転なんだ」 自宅前に立っていた柊は、ものすごく 何かに怯えていた。 そんな柊は、普通のスーツ姿なのに あり得ない程、目立っていた。 (結局、元がいいヤツは何着ても似合うんだな) 特に柊は、スーツが似合うと思った。 「いいから早く乗りなさいよ」 「…両親みたいな運転しない?」 「祐也がいるのにするわけないでしょ?」 「どういう意味だ?」 俺は後部座席に乗り込んだ柊に、質問してみた。 「ちょっと待って!」 柊は慌ててシートベルトをして、カバンを抱きかかえた。 「失礼ね」 「だって…」 「さっきから、柊は何に怯えてるんだ?」 「だって…志貴の両親、運転うまいけど、スピード狂で、すごい運転するし。 志貴、喜んでたし」 「だから、あれは、志穂さんと希以外の そういうのが好きな人間が乗ってる時しかしなかったでしょ?」 「俺は!? 俺、泣き叫んでたんだけど!」 「柊はリアクション面白かったから。 大さんから許可も得てたし」 「そ、…」 「さ、出発」 「死にたくないぃ!!」 安全運転中も、柊はずっと何かを警戒していた。 前へ |次へ |
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