《MUMEI》
柊の憧れの弁護士
「は、灰原さん!?」


トイレから戻ってきた柊は、俺達に向かって大声を上げた。


「もしかして、高山柊君?」

「は、はい」


柊は慌てて、何度も頷いた。


「ひょっとして、この人が、柊の憧れの弁護士?」

「ちょ、祐也」

「憧れとは、嬉しいね」


爽やかな笑顔の灰原さんは、とても若く


三十代後半に見えた。


「あら、じゃあ、この二人が私の裁判を見届けてくれるの?」


そう言った女性は


何故か嬉しそうだった。


(普通、他人に裁判見られるの嫌じゃないかな?)


首を傾げていると


「じゃあ、また後で」


灰原さんは、女性と共に何処かの部屋に向かった。


(確かに、頭の切り替え早いし、やりてな感じするな)


そう思いながら、俺は柊に連れられ


広い、会議室のような部屋に通された。


「ここで裁判やるのか?」

「本当は違うんだけど、今裁判所工事入ってて、いつもの場所使えないんだって。

だから、静かに目立たない位置にいようね」


(どうやっても目立つけどな)


俺は、黙って頷き、柊と一緒に部屋の隅に移動して、パイプ椅子を出して座った。

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