《MUMEI》
一人ぼっちの斉藤さん
「偏見無いんだね」

「まぁ、周りにいるんで。柊は違いますけど」

「…君は?」

「ノーコメントで。それより、移動しなくていいんですか?」


(普通、こんな話は裁判所でしないよな)


「あぁ、そうだね。斉藤(さいとう)さん」


灰原さんの声に、女性が反応した。


「後は、事務所来なくても電話でできる事だからね」

「先生に会えなくなるのは寂しいわね」

「俺としては、泣き顔見なくて済むのは助かりますけど」

「だって、他に泣ける相手いなかったから」


フフフと、斉藤さんは笑った。


(何か、妖しくないか?)


「やましい事は何も無いよ。裁判やるには嫌な過去もちゃんと話してもらわないといけないからな」

「そうそう。それで毎回泣いちゃっても、こうやって笑顔で裁判に勝つ為には仕方ないから。

それに、今日はイケメン高校生二人見れたし。

先生、本当にありがとうございました」

「一人で帰れますか?」

「はい。これからは、一人で頑張ります」


斉藤さんは、笑顔で部屋を後にした。


「…あの人、裁判に来てくれる身内も友達もいないんだよ。

だから、他人でも、自分が過去に勝つ所見せたかったんだ」

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