《MUMEI》
ヘタレ柊と、かっこいい志貴
「「…」」

「そんな顔するなよ。特に、高山君」

「あ、はい!」

「こんな事、弁護士やってたら普通なんだからな。

寧ろ今回は楽な方だぞ」

「はい!」

「それから、そんな大声いらないから」

「は、あ、すみません!」


「「また、大声」」


俺はつい灰原さんとハモって柊にツッコミを入れてしまった。


「君の方が向いてるかもね」

「俺は無理だし、他にやる事ありますから」

「そう、残念。じゃあ、事務所には本当に来ないの?」


(ちょっと興味はあるけど、そんな軽くは踏み込んでいい世界じゃないよな)


灰原さんの言葉に、俺は頷いた。


「じゃあ、どうやって帰るの?」


荷物をまとめ、歩きながら灰原さんが俺に質問してきた。


灰原さんの荷物を持とうとして、断られた柊は、トボトボと俺達の後ろからついてきていた。


「迎えが来るんで」


そう言って、裁判所の外に出ると


「おかえりなさい、祐也」


既に、志貴がいた。


「…車…」

「母さんの」


志貴は、行きと違う赤いスポーツカーで来ていた。


隣で、灰原さんが軽く口笛を吹いた。

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