《MUMEI》 「伊山志遠。」 名前だけ告げると、満足そうに和月は笑った。 「へぇ。いい名前だな。」 流石に、腐っても双子だった。 「それ、こいつにも言われたな。」 横で、未だに不機嫌そうに頬を膨らませている一宮に視線を送ると、和月はああ、と苦笑いした。 「こんなでも俺ら双子だしな」 その言葉には、妙に重みがあるような気がした。 しかし俺が、その重さの意味を知るのはこれから何年も先の話だが。 「あ、やっぱりここにいた。」 そんなとき、後ろから声がして、振り返るとそこには、錦と宇佐美の二人がいた。 「あ!永久っ!澪!」 それに気付いた一宮も、さっきまでの不機嫌さは何処かに消え去ったようで、満面の笑みを二人に向けている。 「授業は楽しかった?」 そんなことを一宮に尋ねながら錦はこちらに近付いて来るのに対し、宇佐美はその場に立ち竦んだまま動かない。 「永久?永久もおいでよ?」 不思議そうに一宮に見詰められて、渋々といった感じでこちらに歩み寄ってきた。 「あ……あの!!……い…伊山…!!…さっ!きは……ホントごめん……」 そして、俺の目の前に来ると、本当に反省しているのだろう。 前へ |次へ |
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