《MUMEI》
式前・式の最中
「ほら、祐也、時間無いから急いで! 次控えてるし!」

「あ、あぁ」


俺はまず、いつものクラスの仲間達と


それから、演劇部の皆と


そして、何故か緑化委員会の皆と写真を撮った。


普通、卒業式の後にする記念撮影


それを、何故今急いでやってるのかといえば


それは、忍のせいだった。


『卒業式が済んだらすぐに学校を出るからな』


理由も告げずに忍はそう言った。


(…ずるいよな)


『これで、最後だ』


そう言われてしまえば、俺は逆らう事はできなかった。


こうして、俺は


卒業式が始まる前に、できるだけ写真撮影を行った。


その様子は


卒業後も、しばらく語り継がれる程の光景だった


…らしい。


「はい、ここまで」


(つ、疲れた…)


卒業式が始まる前なのに、俺はかなり疲れていた。


おかげで


皆が涙ぐむ中で


うっかり、寝そうになってしまった。


きちんと起きていたのは


志貴の答辞の時だけだった。


(何か、俺、最後まで普通じゃないな)


思わず苦笑してしまい


号泣している拓磨に思いきり睨まれた。

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