《MUMEI》

なのに、どうしてだ?

何が、この関係を壊したのか。

「帝……妙な悪ふざけすんなよ」

すると、今まで何も言わなかった彼が、口を開いた。

「ごめん。剣。嘘でも、冗談でも、悪ふざけでもないよ」

帝の声は少し震えてた。
それが嫌にリアルで、俺に現実逃避の口実を与えてくれない。

体が小さくて、何故か女みたいに線の細い俺は、ガキの頃からよくイジメられていた。

そんななか唯一、一緒にいてくれたのが帝だった。

「帝。俺ら、ダチじゃねぇの?幼馴染みじゃねぇのか?兄弟みたいに育ったじゃん?」

親同士も仲が良く、家も向かい同士、そんな俺たちは、本当の兄弟のように育った。

盾はまだ小さかったから覚えてなかったみたいだけど、本当に仲が良かったんだ。

「剣、俺は………お前が好きなんだ。ガキの頃からずっと好きだった」

頭を、金槌で殴られたみたいな衝撃だった。

俺は、初めから、幼馴染みでも、ダチでも……

「………なかった……?」

いつの間にか、涙が溢れてきた。

無上に、裏切られた気分だ。

「つる……「離せよ……」

名前を呼ぼうとした帝の言葉を遮る。

腹が立つ。

涙が、止まらない。

きっとこれは俺の人生で一番の事件だと思う。

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