《MUMEI》
銃口
今にも引き金を引きそうな人差し指。


彼氏に命を握られている。親友に命を握られている。

いや‥

もう、彼氏じゃない…


親友でもない。



だったらこの人達は何なのだろう?



突き付けられた現実を理解出来ないまま、それでもリョウを助けたい一心で、加奈子は黒光する銃口の前に立ち塞がった。

引き止めるリョウの声も無視して…


「相変わらずバカだね、加奈子。」


美雪がせせら笑う様に言う。

「自分の命に変えてもこの悪魔を守ろうとするとはねぇ。」

「お前らなんかに判るものか!!」


どれだけリョウが苦しんでいるか、傷付いているか…

一体どれだけ苦しませれば気が済むのか!


そんなやり場のない怒りから、加奈子は叫ぶ。

「どっちが悪魔だよ!?お前らの方が…っ!!」

「黙れ。」

修二は銃口を加奈子の額に当てた。
ヒヤリと冷たい鉄の感触が直に伝わる。

「フッ…強がってはみたものの、やはり怖いみたいだな。」

引き攣る加奈子の顔を見て修二は面白がっていた。


「でも安心しな。そいつはドクターの所迄連れて行かなきゃならない。生きたままでな。だからまだ殺さないよ。」

「ドクター…?」

「加奈子は知らなくていいんだよっ!!」


「んんっ!?」



次の瞬間、加奈子は布で口と鼻を押さえられた。




吸ってはいけないとは判っていたのに



苦しくなって吸ってしまった。




遠退く意識の中、リョウの叫び声だけが聞こえた。

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