《MUMEI》
戻れない
「離さねぇよ」

そう、言い放った帝の声は酷く冷たい。

「何で……?」

そう問掛けるしかない。
抱き締められたままの俺は、動けないのだから。

「好きだから」

幾度となく告げられる『好きだ』という言葉。
それは、呪文の様に俺の胸を締め付ける。

「い…いから……離……せ……」

せっかく止まりかけた涙は、また俺の頬を伝っていく。

「離さねぇって言ったろ?」

ぎゅっ……

更に、帝が俺を抱き締める力を僅かに強めた。

「……んっ……」

無理矢理上を向かされて、俺は再び唇を帝のそれで塞がれる。

キツク閉じた歯列を無理矢理割って、帝の生暖かい舌が口内に侵入して来る。

「………ん…ゃ…ハァ…ャメ……っふ…ん」

キスはますます酷くなり、どちらのものとも言えない飲み込み切れなかった涎がおれの顎のラインを伝っていく。

段々俺の意識が朦朧としてくる。

「ん……は……っミカ……ど」

俺の口内から、卑猥なくちゅくちゅという水音が響き、俺と帝の耳の内部を犯す。

「……ふ……ぁ…帝……やめ……」

俺の口から洩れるのは、甘い吐息を含んだ掠れた声。
「ひゃ……っ」

不意に、帝からのキスが止んだかと思えば、帝は俺の首筋に唇を這わせてきた。

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