《MUMEI》
納得できない
「全身綺麗に洗ってから、外にある着替に着替えろ」

「待てよ、忍」


俺は、出て行こうとする忍の腕を掴んだ。


「何だ」

「どうして、落としたんだ?」


(刺青でも、特殊メイクでも、背中の傷を隠す為のものという意味では同じだったのに)


「もう必要無いからだ。学校に通わないお前は、背中を人前にさらすような場面には遭遇しない」

「それは、そうだけど…」


忍の言葉に間違いは無いが


(でも、全く無いとは言い切れないし)


俺は、納得できなかった。


「いいから、着替えろ。俺も、着替えてくる」


忍は俺の腕を振り払い、バスルームを出ていった。


(仕方ないな)


とりあえず、いつまでも裸のままでいるわけにはいかないし


体を冷やして風邪を引くわけにもいかなかったから、言われた通りにしよいと


…したが。


「何だよ!これは!」


シャワーを終えた俺は、下着姿で忍の前に飛び出した。


忍はスーツから


いつもの、執事服に着替えていた。


そして、言った。


「早く着替えろ。

得意だろ? 女装」


俺に用意された着替えは、メイド服とウィッグだったのだ。

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