《MUMEI》
意外な行き先
「ふざけるな!こんなの着れるわけないだろ!」

「ふざけてはいない。

それに、こんなのではない。

これは、正真正銘のメイド服だ」

「それがふざけてるって言うんだ!」


俺は忍に殴りかかったが


パシッ!


「くっ…」


忍は普通に受け止めた。


「いいから、早くしろ。時間が無くなる」

「嫌だ」

「…本当に、嫌か?」

「当たり前だ」


忍はため息をついた。


そして


「それが、春日家のメイド服だとしてもか?」

「…え?」

「旦那様の、残した物、…欲しく無いか?」

「忍?」

「卒業祝いに、くれてやろうと思ったのに…

いらないのか?」

「すぐに着替える!」


女装が恥ずかしいなんて、そんな普通の考えは、俺の頭から綺麗に抜けていた。


そして、俺は、今までの女装経験を見事にいかして、立派なメイドに変身した。


「行くぞ。屋敷に着いたら、喋るなよ」


そう言われた俺は黙って頷き


屋敷に着く前から、ずっと無言だった。


そして、俺と忍が乗った車は


春日家の


二度と、通る事はないと思っていた門を、通り過ぎ、敷地内に入った。

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