《MUMEI》
幼馴染み
「おい餓鬼、何ボーッとしてやがる」

「…別に」

「とりあえず、この家にいるからには、それに相応しい行動を心掛けろよ」

「………」




台詞まで同じときた。





「じゃ、俺様も家を出るから。廉、そいつの躾ちゃんとしておけよ」

「分かってるよ。行ってらっしゃい」





輝の後ろ姿を見送りながら、悠一はできるだけ怒りを押さえて廉に話し掛けた。





「躾って…俺、ペットじゃないんですけど」

「うん、分かってるよ。初日から嫌な思いさせてゴメンね。でも、本当に根はいい奴等だからさ。許してやってくれ」

「俺にはやっぱり、二人とも性格悪い嫌な奴にしか見えないんですけど…」

「んー、それは困ったなぁ」





困ったなどと言いながらも、どこか楽しそうな廉。彼がいるなら、この仕事もなんとかなるかもしれないと思いつつ、悠一はある事が気になった。





「あの、南方さん。あの二人にタメ口つかったり、呼び捨てにしたりしてて、大丈夫なん
ですか?」

「うん、大丈夫だよ。僕は翔と輝の幼馴染みだからね」

「あの二人と幼馴染み…。俺だったら嫌になるな」

「そんなに嫌な奴等じゃないんだけどなぁ。…あ!もうこん
な時間だ!!悠一君、悪いけど一人でお嬢様のところへ行って!僕、この後用事があるんだ」

「えっ!?」

「それじゃ、お願いね〜」

「まっ、待ってください!お嬢様の部屋って何処だよ〜!!」




悠一の叫びは、廉の去った廊下に虚しく響くだけだった。

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