《MUMEI》
温もり
「隆志」
「惇」
「たかし…」
コアラが木にしがみつくみたいに俺は隆志にピッタリとくっついた。
髪を愛しげに撫でられて、凄く気持ちよくて、俺は自分から隆志の唇にキスをした。
通夜も終わり、俺達はタクシーで隆志が泊まるビジネスホテルへと来た。
「隆志がいるから俺、ちゃんと立っていられたんだ」
「立派だったよ惇、…きっと仁さんもおまえを頼もしく感じていたと思う」
「………、…」
広い胸が気持ちいい。俺を支える大きな手の平が嬉しくて
俺は隆志の手を掴み、それを頬に押し当てた。
「あったかい…、好き…、隆志が好き…」
今度は隆志からキスが降ってきた。
大好き
愛してる
▽
ベッドで、ただ抱きあいながら、俺は隆志の温もりを噛み締めていた。
もし隆志の存在がなかったら俺は今頃どうなっていただろうか?
初めて会った頃はあまり好きなタイプじゃなかった。
挨拶の仕方がなってないとか、頑張って話かけても素っ気ない態度とられたりとか、何よりもかっこよすぎて、…とにかく羨ましかったんだ。
顔も良くて身長が高くて、声までいい。
綺麗なイントネーションな言葉使いも名古屋弁がなかなか抜けなかった俺には本当にマジで羨ましくて。
それでも気がついたら、ちょっと飯食う位の仲になっていて、ちょっと悩みなんかも話したりするようになった。
だから、裕斗がちょっと気になってる事をポロっと隆志に言ってしまった事があった。
まさか俺が隆志に襲われるなんて夢にも思わなかったし、俺が隆志に惚れるとか、隆志がそんな俺に答えてくれたとか…
裕斗に気持ちが移っても、それでも愛してくれた現実が俺には、もう…
これ以上嬉しくて、でも申し訳なくて、しかし幸せな事はないのだと
俺は…
隆志を愛してよかった…
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