《MUMEI》
おかえりとただいま
タクシーが、アパートの駐車場に着く頃には、夜になっていた。


「ありがとうございました」


俺は頭を下げ、制服や荷物が入った袋を持って部屋に向かった。


(…ん?)


部屋の入口に、人影が二つ。


「「おかえり、祐也」」


普通に、そう俺に話しかけてきたのは


志貴と、柊だった。


思えば、この二人には振り回されっぱなしだった。


(まぁ、柊はヘタレってわかったけど)


三年、経った今でも、志貴の弱点は


(あ、あった)


純情で、下ネタに極端に弱い位しかわからなかった。


「ただいま」


そんな二人に、俺は笑顔で挨拶した。


普通に挨拶したはず、なのに…


「「どうしたの!? 祐也」」


ものすごく、驚かれた。


それもそのはずだった。


(わ、忘れてた!)


俺は今、メイド服を着ていたのだった。


「別れ際にコスプレ強要なんて、忍さんひどい!」

「可愛いけどね」


(コスプレ強要は嘘じゃないし…)


「でも、良かったよ。帰ってきてくれて」

「そうそう」

「もしかして、心配したのか?」

「「うん」」


二人は、真剣な表情で頷いた。

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