《MUMEI》

「それにサキさん……七生さんの御祖母様が、入院されてそう長くないと分かって……私達、擬似の夫婦を演じてサキさんを安心させたかったのです。」

お祖母さん、そんな重い病だったのか。


「ありがとう伝えてくれて。」

きっと、沢山葛藤があったのだろう。


「ごめんなさい、嘘つきで。」

瞳子さんは目を潤ませている。
俺は、首を横に振った。
安心させてあげたかったからだ。

みんな、嘘つきだもの。
誰も悪くない。



「七生さんみたいな、お友達でいてくれますか?」

息が詰まりそうになり、飲み込んだ勢いで頷く。

……ちがうんだと
口から零れてしまいそうになる。

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