《MUMEI》

でも帰りたないなぁ‥。


またアイツに振り回されるに決まっとるもん。


みんな帰ってもうたしなぁ。



どっかで暇つぶし──て訳にもいかへんし。


とか思とったら。



「‥?」


雨‥!?


雨降ってきよったッ‥。


「嘘ぉ‥」


あたし傘持って来てへんよ〜‥。


──‥ツイてへんわ‥。


「もぉ〜っ‥」


濡れるの嫌やのに‥。


「‥?」


玄関のとこに誰か立っとる。


近付いたら、ソイツが振り向いた。


「遅かったですね──何か用事でもあったんですか?」


「‥ぇ、アンタ‥」


「──お迎えに上がりました、お嬢様」

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