《MUMEI》

.

わたしの声に、義仲が顔をあげる。


そして、


笑って言った。



「一緒に乗せてってもらおーぜ」



………。


………………はぁッ!??



わたしは呑気な義仲を見て、眉を吊り上げた。


「なんでそーなんのよ!」


空気読め!と怒鳴ると、義仲はうるさそうに顔をしかめた。


「だって、このホテル、俺ン家の近くなんだもん」


歩いて帰るのだりーし、と、のうのうと答える。

わたしは納得いかず、なに言ってんの!!と怒った。


「わたしン家は、そっち方面じゃないッ!!」


「俺ン家から、車出すよ」


「そーいう問題じゃないの!!」


必死こいて言い返したわたしを、春蘭さんはあっさり無視して、にこやかに言った。


「じゃ、OK??行きましょう」


言い切る彼女に、わたしは噛み付くような勢いで答えた。


「全然OKじゃないッ!!話聞けッ!」


わたしの剣幕に、春蘭さんは口を閉じた。


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