《MUMEI》

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わたしは引き攣りながら、冗談言わないで、と呻くと、

川崎先生はため息まじりに、話し始めた。


「…《李 春蘭》、香港生まれの19歳。向こうでは大学生だな。母国語は広東語で英語も堪能。日本語は勉強中。今回の留学も、表向きは語学勉強ってことになっている。趣味は射撃、乗馬、ヨット。家族構成は父親、母親、妹が2人」


趣味が金持ちっぽいことを除けば、どこにでもあるような、ごくごくフツーのプロフィールだ。

わたしは先生を睨みつける。


「フツーじゃん!フツーのお嬢じゃん!!そんなヤツが、なんで義仲の婚約者なのよ!?カタギは巻き込まないのが、あんたたちのモットーじゃなかったの!?」


以前、わたしは、そのモットーを川崎先生から言われたことがあった。

『カタギは巻き込まない』

先生はわたしに、義仲に近づくな、といつも忠告していた。口うるさいくらいに。

だとしたら、話が食い違う。
わたしはダメで、春蘭さんは良いなんて、納得がいかない。


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