《MUMEI》

あとは、和月は病的にシスコンだってことと、永久は陽和が好きだってこと。
澪は妙にしっかりしてて、五月蝿い陽和たちをまとめてる。

和月は、頭が無駄に悪いぶん、有り得ないぐらい運動神経がいい。そしてそれを補うかの如く有り得ないぐらい頭が良いのが陽和だ。理数系、文系関係なく完璧にこなすので、教師も舌を巻いている。
それなのに、何処か抜けてて、見ていると危なっかしい。

それから、一番俺が驚いていることは、人付き合いが面倒で嫌いな俺が、アイツらと居ることを、少なからず苦痛に感じてはいないこと、だったりする。

まぁ、そんな感じの俺たちにも夏がきた。
蒸し暑くて苛々するけど。

そんな中、やっぱり五月蝿いヤツラは相も変わらず五月蝿い。

「志遠っ!もうじき夏休みだよな!?」

だからどうしたんだ?と言いたくなるようなことを、目の前で満面の笑みで言っているヤツみたいに。

「こら、永久。暑いんだからちょっとは静かにしなさいよ」

落ち着いた声音で、澪は俺の前で騒いでいた永久を宥める。

「あつ……私も夏バテしそう……」

俺の隣で椅子に座りながら、机に突っ伏している陽和も、少し額に汗を滲ませている。

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