《MUMEI》

「寒い……」

無意識に呟いていた。
窓を叩いたが反応しない、携帯を鳴らしたのもこれで四回目だ。
これで起きなかったらもう、帰る……。


つまり、
これが最後……
かじかんだ指で七生の番号を押す。
耳元で電話のかかる音が響く。







「出ないじゃん馬鹿……」

『ばかあ?』

不意に七生の声が聞こえる。
体は冷えているが芯は温まった。


「入れて、窓……」


『窓って……、ここ二階……』

七生と窓硝子越しに目が合う。


「お掃除に参りました。」

外壁の縁を命綱無しで渡ってきたので、足腰にきている。

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