《MUMEI》

ピクッと反応した陽和は、さっきまでの具合悪そうな様子は綺麗さっぱり消えて、子犬のように人懐っこく笑いながら、瞳をキラキラさせて、興奮気味に食い付いてくる。

「行かねぇよ。海なんて」

バッサリ切り捨てた俺を見て陽和と永久は目をパチパチさせて、和月と澪はクスクス笑ってる。

「えー?なんでっ!?いぃじゃん一緒に行こうよ!」

ぷくっと頬を膨らませながら、不満そうに陽和は言う。

「めんどくせーから嫌だ。」

「面倒じゃねぇって!楽しいぞっ!!海は!」

永久も目をキラキラさせて、はしゃいでる。

「志遠、どうだ?一緒に。コイツらどうしてもお前と行きたいみたいだし。」

余りの五月蝿さを見兼ねて、和月が陽和たちの助け舟を出してきた。

「まぁ。いいんじゃない?海くらい」

それに便乗して、澪まで口を出してくる。

俺を見るこの、無駄に顔の整った四人の瞳には、明らかに期待の色が滲み出ている。

「はぁ、分かったよ。行けばいいんだろ?」

半ば、諦め気味に俺は承諾した。

俺はこんなにも情に流されるような性格だっただろうか。
多分違う。前はもっと、冷たいヤツだったと自分でも思う。

変わったキッカケは紛れもなく、この四人のせいだ。

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