《MUMEI》

暫くすると、チャイムが鳴って、和月たちは各々の教室に帰って行った。

「海、楽しみだね!」


アイツらが教室に帰ったあと、陽和は目を細めて言った。

「別に」

素っ気無く返すと、陽和は小さく溜め息を吐いた。

「もっと楽しめばいいのに。」

然り気無く、口に出されたそのコトバ。
それは何故か、その時の俺には酷く難しく感じた。

「うるせーよ。俺の勝手だろ」

いつものように言ったつもりが、俺の声は、どこか陽和を突き放すように冷気を帯ていた。

「ま、いいけど。」

俺の冷気を帯た声に、気付いていたハズなのに、陽和はいつもと何も変わらない楽しそうな人懐っこい笑みを見せると、席に座り直した。

ちょうどその時、教室の前の扉が開いて、小笠原が入ってきた。

「はい、じゃあ授業を始めます。教科書の20ページを開いて」

そんな、ありきたりな言葉で、四時限目の授業が始まる。



何問か問題を解いて、黒板に書かれた文字を写す。
それを何度も繰り返して、そろそろそれにも飽きた頃、タイミングよく授業の終了を知らせるチャイムが鳴った。



「はい、じゃあこの授業はここまで。」

日直の号令に合わせて起立、礼と挨拶をして、四時限目の授業が終わった。

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