《MUMEI》
序章
.


すべてのはじまりは、

そう

あのときから。



「名は何という?」

「…ありません」

「ならば、授けよう。おまえは今日、このときから『帰蝶』だ。そう名乗るといい」



−−−まだ、あどけなさを残す、美しい顔つきの少年に

そう名付けられた、あのときから、

わたしの苛酷な運命は、

ゆっくりと、廻り始めたのだ。



******


−−−時は戦国乱世。


日ノ本の国の表舞台で、多くの大名が、その権力を誇示し、ひしめき合う中、

ひっそりと、影に隠れて生きる、一族がいた。

彼らは流れゆく時に属さず、
時代を渡り歩き、
風のように現れては、
そして、人知れず消えていく……。


人々は、彼らを、


『鬼』と呼ぶ−−−−。



******

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