《MUMEI》

「んぅ……疲れたぁー」

陽和は、立ち上がって俺の隣で大きく伸びをして、体を解す。

「志遠、今からお弁当だね。みんなもまた来るね」

陽和は、立ち上そういって、にっこりと笑って、俺を陽和は見下ろす。

「あぁ、そうだな。」

適当に相槌を打って、俺は意味もなく、窓の外に目をやった。雲一つない空には積乱雲がひろがり、夏の訪れを主張していた。

「何見てるの?」

不意に俺の顔の真横に、陽和の顔が近付く。

「う…わ…っ」

俺は思わずバッと顔を仰け反らせる。

「…なに?志遠。どうかした?」

ズイッと顔を寄せられて、自分でも顔に熱が集まるのが分かった。

「志遠、顔赤いよ?熱でもあるんじゃない?」

そんなことを言うや否やコツン、と俺の額に、陽和の額が触れた。

「………っ……!?」

至近距離で見る陽和の顔は、本当に整っていて綺麗だ。

目の前にある、ハニーブラウンの瞳はキラキラと光を反射させ、睫は長くクルリとカールしているし、鼻もスッと筋が通っている。
そして、肌は抜ける様に白い。
顔が近付いた事によって、今にも触れてしまいそうな位置にある、形のいい唇は、赤く、何かの果実を思わせた。

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