《MUMEI》

「それは──君が気付いていなかっただけだ」


「ちゃうもん」


「何故そう思うんだ?」


「理由あらへんやん」


「君はこの邸に独りぼっちだった。それだけで十分だ」


「せやからあたしは‥、!?」


「そう強がらなくてもいい」


「ちょ‥」


またキスする気‥!?


と思たら‥離れた。


ていうか速ッ‥。


何今の‥。


「フ‥ビックリされました?」


「当たり前やん‥」


今の尋常な速さやなかったで?


「アンタほんまに何もん‥?」


「執事ですが?」


「そら分かるけど‥」


やっぱアンタ、ただもんやないわ‥。


「──さて、仕事に戻らなくては」


「ぇ‥もぉ‥?」


「どうしても、と仰るならもう少し時間伸ばして差し上げますよ?」


「いやっ‥そないな意味で言うたんとちゃうからっ」

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