《MUMEI》
・・・・
 二人に言葉はない。あるのは相手を死に追いやる意志のみ。
 身の丈ほどもある長剣を紋章入りの鞘から振り抜き、カイルは軽々と振り下ろした。血溝が怪しい輝きを放ち、獲物を待ちわびている獰猛な獣を彷彿させる。
 先手を打って出たのは妖魔ヴォジャノーイたちだ。二メートル強を超える巨人へと化け、一斉に跳びかかってくる。
 数十メートルの距離を二歩三歩で詰め、三人は鋭い爪でカイルの身を切り裂こうと襲いかかるがその動きはカイルの速さには遠く及ばず、ひらりと躱される。
 カイルは制御していた魔力を解放、猛り、全身を巡り爆発的な力を生み出した。騎士の動きは高速から光速へと転じ、ヴォジャノーイたちは彼の姿を見失ってしまう。
 咄嗟のことに遠巻きに眺めていたエリザですらカイルの動きに追いつけない。カイルは魔力の放出を止めず、詠唱に入った。
 「我に仇なすものを世界の理より隔絶し、時を縛れ。エターナルプリズン」
 言い切るや否や、鳥のように目まぐるしく視線を巡らす鈍足たちを切り捨てた。一瞬のうちに三度切りつけられ、もはや原型を留めていない妖魔たちは流れゆく時のなかから切り離され、肉体的な経過を強引に止められてしまった。

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