《MUMEI》

目覚めたらソファーの上に寝かされているのがわかった。

まだフラフラする体を無理矢理起こして、一体此処が何処なのかと辺りを見回した。

豆電球の明かりが微かに照らし出すこの部屋には、加奈子が今座っているソファー以外、全くと言っていい程何もなく、ただ、だだっ広い箱の様に思えた。

下に広がるコンクリート状の床が、殺風景な部屋をより冷たく演出している。


見覚えのない所に連れて来られ、不安ばかりが募る加奈子。
それに、何よりリョウの事が心配だった。


記憶が遠退く寸前のあの叫び声…
殺さないとは言ってたけど、きっと酷いことされたに違いない…

あれ?



あれは、出口…?


広い部屋の隅の方に、ポツンと一つだけ扉があるのが見えた。

リョウを助けようにも、まず自分の居場所を把握しなければ始まらない。

カギが掛かっている可能性はかなり高いが、それでも試さない事にはわからない。

加奈子はその扉に向かって走り出した。

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