《MUMEI》
風呂場
ガチャ


「これで良し」


クーはバスルームに到着すると、すぐに鍵をかけた。


ここの鍵は、一度アルゴンに壊されてから、強化されていた。


ちなみに壊した理由は


一緒に生活を始めた頃


『風呂に入る』


そう言ったまま、クーが一時間以上出てこなかったのを心配したからだった。


その時クーは


…普通に、湯船でくつろいでいた。


クーは、基本長風呂で


他は節約しても、そこは我慢しないほどの風呂好きだったのだ。


ガラガラガラ


「ここ、座って」


クーは、脱衣所から、洗い場の中まで台車を押し、少女に話しかけた。


「…」


少女はゆっくりと立ち上がり、椅子に座った。


薄汚れている上に、長い髪が顔に張り付いている為、少女の表情はわからない。


そんな少女を、クーは『綺麗』と言った。


それは、容姿ではなく少女の纏う雰囲気に対してだった。


「こっちが水で、こっちがお湯。髪を洗うのが、これで、体を洗うのが、これ」


クーは丁寧に、何も知らない子供に言い聞かせるように説明して


少女をその場に残し、自分は台車を折りたたみ、担いで脱衣所に移動した。

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