《MUMEI》
・・・・
 常人にはヴォジャノーイで事足りるのだが、兄であるカイルは違う。それはエリザも計算の内だった。しかし不死身であるヴォジャノーイがこうも容易く倒されてしまうとは思ってもみなかった。不死身であることを利用し消耗戦を仕掛けるつもりだったのだが、これでは戦いにもなっていない。あまりにも一方的な結果に終わっていた。
 妖魔の血に染まり、白銀の刃が見る影もなく赤くなり雫を落とす。
 自らの従える妖魔たちを刹那のうちに切り伏せ呼吸ひとつ乱していない騎士に、エリザは瑞々しく弾けた唇をわずかに開き、感嘆の声を上げた。
 「やっぱり、兄さまはすごいですわ。あの子たちをこうも容易く殺すなんて・・・芸術にまで磨き上げられた剣術に、それを最大限に活かす身体能力。そしてわたくしの知り得ない魔法による思わぬ突破口。
 わたくし、つい見惚れてしまいました」
 戦いの中にあるというのにエリザはまるで無関係であるかのように満面の笑みを浮かべ、うっとりとしている。

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