《MUMEI》

J社長「まったく、今回のT物産の一件では、えらい痛手を被ったな…。」



ジャムおじさんは、背中越しに愚痴をこぼした。



疲れた声だ…。



これでジャム食品株式会社は、中国産アズキの偽装工作の隠れ蓑を失ったことになる…。



農薬に汚染されていたとは言え、そのアズキが生み出す莫大な利潤を失うのは、会社にとって大きな損失だ。



J社長「まぁ、我が社が産地偽装に直接関わっていたという事実が、世間に知れ渡る痛手に比べれば、蚊に刺された程度なのだがな……ハハハッ…。」



無理して平静を装う利己主義者の虚勢が、その笑い声にはあった。



先ほど垣間見たジャムおじさんの昔の笑顔は、アンパンマンの心中で幻のように失われていった――…。



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